Lisa 先生の海外大学進学サバイバル インタビュー

By studyextension on 2026/06/26(Fri) - 00:09

Lisa 先生の海外大学進学サバイバル インタビュー

〜英米の教育制度比較からUCLでの脳科学探求、ロンドン就職のリアルまで〜

アメリカ、日本、そしてイギリス。複数の国で教育を受け、世界トップレベルの大学であるUCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)の人間科学部を卒業。その後、厳しいビザの壁を乗り越えてロンドンで就職した経験を持つ留学カウンセラーに、ご自身の海外進学とキャリアの軌跡、そして今後のビジョンについてお話を伺いました。

14歳でのイギリス移住と、専門特化型教育への戸惑い

――まずは、これまでの海外生活の経歴を教えてください。

14歳までほぼアメリカで育ちました。その間の2年間だけ東京に住み、幼稚園から小学2年生まではインターナショナルスクールに通っていました。そして14歳の時にイギリスへ引っ越し、現地の学校に入りました。

――アメリカからイギリスへ移り、学校生活はいかがでしたか?

実は、イギリスの教育制度には最初すごく反発していました。イギリスではGCSEやAレベルといった試験に向けて、14、15歳という早い段階から科目を絞って専門性を磨かせるのですが、当時の私にはそれがひどく窮屈に感じられたのです。「なんで歴史を選ばないと歴史を学べないの?」と疑問に思っていました。

先生からの期待も高く、「サイエンスを取らないとAレベルが取れないよ」と脅されたりもしたのですが、あえてそれに反発して挑戦したい気持ちから、学んだことのなかったフランス語や音楽、演劇などを幅広く選択しました。元々リベラルアーツのような幅広い学びが好きだったのだと思います。

――しかし、最終的なAレベルの科目選択ではサイエンスに特化されたのですよね。

はい。Aレベルでは生物、数学、化学、そして発展数学(Further Math)というサイエンスに全振りしました。

なぜ全部サイエンスにしたかというと、「一番選択肢が広いから」です。医学部などの道を閉ざしたくなかったという思いもありました。生物などを取っておけば、将来どの方向に進むにしても閉ざされる扉は少ないと考えたのです。

私はウェールズの学校に通っていたのですが、ウェールズはイングランドと教育制度が異なり、1年目に「AS」という資格を取り、2年目に「Aレベル」を取る仕組みでした。ASで最高の成績を取らないと最終的にAスターが取れないというプレッシャーの中、必死に勉強しました。

小学校から高校まで、普通は自分で進学のチョイスをする機会はあまりないですよね。だからこそ、自分で徹底的に調べて選んだ道を進み、それが正解だったと思えたことは、私にとって大きな自信となり「宝物」になっています。

アメリカか、イギリスか。運命の「UCL 人間科学部」との出会い

――大学選びでは、アメリカとイギリス、さらには日本も検討されたのでしょうか。

はい、中1の頃から大学のセミナーに参加するほど勉強や進路への好奇心は強かったです。

最初は、幅広い学問を学べるアメリカの大学に惹かれていました。しかし、アメリカの大学は構成が自由すぎて、2、3年後になって「やっぱりこのメジャー(専攻)は取れないよ」と言われたりするリスクがあることに不安を感じていました。また、日本の大学の学部についても調べましたが、自分が本当に求めているリベラルアーツとは少し違う気がしました。

一方でイギリスの大学は最初から専門的すぎる……と悩んでいた時に出会ったのが、UCLの「人間科学部(Human Sciences)」でした。1年目に様々な学部の基礎を学び、2〜3年目には自由にモジュール(科目)を選べるというカリキュラムに一目惚れしたのです。

UCLの人間科学部を見つけてからは、「もうここしかない」と思うようになりました。イギリスには人間科学部がある大学が3校しかなかったため、出願枠を全て使わずにその3校だけを受験し、人間科学部に完全にフォーカスしたパーソナルステートメント(志望理由書)を提出しました。

人類の進化を「脳科学」から紐解く

――UCLの人間科学部では、具体的にどのようなことを学んだのでしょうか?

「人間の進化」をメインテーマに、なぜ人間は今このようになっているのかという問いを、生物学、神経学、遺伝学、心理学、人類学などを広く横断して探求しました。

学びを進める中で、人間の進化において最も謎が多く、毎週のように新しい発見があるのは「脳」だと気づきました。脳のことをもっと知れば、人間の進化についてさらに理解できるのではないかと考え、3年目は脳科学にフォーカスしてモジュールを選びました。

――卒業論文も非常にユニークなテーマだったそうですね。

はい。人類学と脳科学の両方の視点から「なぜ思春期の子供はリスクの高い行動に出るのか」というテーマを探求しました。

統計的に見ると、人間の死亡率は赤ちゃんの時が一番高く、その後下がっていくのですが、思春期になると無免許運転や飲酒などの身体的リスクをとるため、再び上昇するんです。これは生物学的に見ると、繁殖期前なのに自ら命を危険に晒すという矛盾した行動です。

これを進化論的に見ると、思春期においては「同年代のグループから省かれること」が最も大きなリスクなんです。だから、身体的なリスクを取ってでもグループに属そうとする。さらに脳科学的にも、思春期は感情をコントロールする前頭葉が未発達であるため、そうした行動に出やすいことが証明されています。この2つの視点の組み合わせが非常に面白かったです。

――留学中の生活面についてはいかがでしたか?

父には本当に感謝しかありません。私はイギリス人ではないため「国際生」としての高い学費を払う必要がありました。科学者である父は、私が本当に行きたいところに行けるようにと、アメリカの家を売ってまで学費をサポートしてくれました。

生活面では、1年目は寮に入り、2・3年目は友人とフラットシェアをしました。シェアメイトは日本人だったのですが、これは家でリラックスするためです。家の中では靴を脱ぐといった文化の基盤が同じだと、無用なストレスを感じずに済みます。また、「ジャパンソサエティ」というサークルで活発に活動していたため、そこで知り合った仲間が多かったのも理由の一つです。

ロンドン就職のリアルと、本当にやりたいことの発見

――卒業後は、そのままイギリスで就職されました。

はい。大学院に進むことも考えましたが、人間の生態を語る上で、多くの人が属している「ビジネスや社会」を一度経験しておかなければならないと思い、新卒でイギリスの金融系コンサルティング会社に就職しました。

しかし、現実は非常に厳しかったです。プライベート・エクイティなど企業売買の戦略を練る仕事自体は楽しかったのですが、朝の1時や2時までAIのように膨大な作業をこなす毎日でした。ストレスで肌荒れに悩まされるなど体調も崩してしまい、自分が本当にやりがいを感じる環境ではないと気づきました。

――イギリスでの就労ビザの壁も厚かったと伺いました。

そうなんです。イギリスで労働ビザを出してもらうには、給与水準の高い銀行やコンサルティングなどの業界に入るしかほぼ道がありません。給与基準が高すぎて、優秀な研究者でさえビザが下りないことが社会問題になっているほどです。

私自身、就労ビザをキープしなければならないというプレッシャーが常にストレスになっていました。大学卒業後2年間自由に住める「卒業生ビザ(Graduate Visa)」という選択肢もあったのですが、私はその道を選ばず、ビジネスの世界を知るためにコンサルに飛び込みました。結果として「ビジネスの世界は知れたからもういいかな」と踏ん切りがつきました。

――その挫折を経て、留学カウンセラーという仕事にどう繋がっていったのでしょうか。

コンサルタントとして働く中で、自分が本当にやりがいを感じるのは、高いボーナスや数字ではなく「誰かの人生にプラスになれること」だと再確認しました。

実は学生時代から、知人に頼まれて大学選びの相談に乗ったり、パーソナルステートメントの添削をしたりしていて、それがとても楽しかったんです。私自身が、イギリスの厳しいビザ事情や、現地の企業に新卒で入社することのハードルの高さなどを身をもって経験してきました。だからこそ、海外を目指す生徒さんたちに、キレイ事だけではない具体的なアドバイスができると考えています。

今後は、男女の脳の差や、女性に多く見逃されがちなADHDの研究を深めるために大学院進学も視野に入れています。ADHDの子供たちが教室で適切なアテンションを受けられない環境を変えたいという思いもあります。

また、現在は更年期の患者さんをターゲットとした会社でコンサルタントとしても働き始めています。こうした経験も活かしながら、留学カウンセラーとして、生徒一人ひとりが「自分の宝物」だと思えるような進路選びを全力でサポートしていきたいです。